こうしてあっというまに数百年。
ある日、部下を集めて宴会を開いた美猴王、 宴たけなわの頃、突然はらはらと涙を流した。 猿たち 「大王、なにか悲しいことでも?」 美猴王 「いや、こうして楽しんでいても、 先のことを考えるとな・・・」 猿たち 「何が不足なんです。この別天地で勝手気ままな 暮らしができる・・・ こんな幸せはありゃしませんぜ。 なにをくよくよしているんです」 美猴王 「たしかに。今はいい。だがな、先はどうなる? 今に老いぼれてくればいつのまにか閻魔大王の 目にとまってるんだ。寿命が尽きりゃ、お呼びが かかるってわけよ。天上界に入れる訳じゃなし、 無駄に生まれてきたようなもんさ」 聞いていた猿たちも悲しくなって、おいおい泣いた。 中から飛び出したのは、一匹の通背猿。 (つうはいざる) この猿は右手左手が一本につながり、背中を通って 右へも伸びれば左へも伸びる。 通背猿 「大王、なかなか深いところに気づかれましたな。 つまり、悟りを求める心が開けたというわけです。 それで、閻魔大王のことですがね、今生き物の 中でおのオヤジの支配を受けないものが 三つあります」 美猴王 「おまえ、それを知っているのか」 通背猿 「仏、仙人、神、この三つは輪廻ってやつから 外れてて、生き死にと関係がないんです。 不生不滅(ふしょうふめつ)、天地と齢(よわい)を おなじくするってわけで」 美猴王 「そりゃ、どこに住んでるんだ」 通背猿 「人間世界に、古洞(こどう)や仙山(せんざん) というものがありましてな、そこに住んでおります」 美猴王 「よし、すぐに出発だ。 天の果てだろうと訪ね当てて、不老長寿の術を 習うんだ。きっと閻魔の手から逃れてみせるぞ」 ああ、この一言の為に美猴王が、輪廻の網から 飛び出して、ついに斉天大聖となろうとは! さて、あくる日は送別会の大宴会。それが終わると、 美猴王はひとりでいかだに乗り込んだ。大海へ漕ぎ出せば、 連日強い東南の風。 やがていかだは南贍部州の岸についた。
by Seiten_Taisei
| 2001-01-18 10:30
| 児・花果山水簾洞の巻
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