斉天大聖 (せいてんたいせい) その3

 はなし変ってこちらは天上界。 
あくる日、天帝が朝廷にお出ましになると、
張天師 (ちょうてんし) が 御馬監 (ぎょばかん) の 役人を従えて進み出た。

「陛下、新任の弼馬温孫悟空めが、役不足を申し立てて、
天宮を逃げ出しました」

 そこ今度は、南天門から増長天王 (ぞうちょうてんのう) が、天兵を率いて参上した。

「弼馬温めが、理由もなく天門から出て行きました」

天 帝 「ふたりとも、持ち場に戻るがよい。 
      朕 (ちん) は天兵を差し向けて、
      あの妖怪を取り押さえてくれようぞ」

 その時、列座の中から、托塔李天王 (たくとうりてんのう) と、その三男の哪吒太子 (なたたいし) が
すっくと立ち上がった。

「陛下、微力ながら、その役目、我らにお申し付けくだされ」

 天帝は満足そうにうなずき、その場で李天王と哪吒太子に向かって、すぐに悟空を征伐に向かうよう命じた。
 本宮に帰ったふたりは、早速全軍に招集をかけた。
巨霊神 (きょれいしん) を先鋒にすえ、
魚肚 (ぎょと)、薬叉 (やくしゃ) の諸将を従えて
直ちに花果山へ軍をすすめる。地の利を選んで陣を敷くと、
まず巨霊神に命じて、戦いに挑ませた。
 日頃自慢の宣花斧 (せんかふ) を振り回しながら
水簾洞に近づいた巨霊神。見れば洞門の外で、
虎や豹などの妖怪が、槍や剣を振り回して、ほえたて、
はね回っている。

「こらっ、畜生ども。 弼馬温めに知らせろ。
われこそは天上界の大将、天帝のおおせにより、
征伐に参った。
とっとと降参すれば命だけは助けてとらす、とな」

 妖怪達はあわてて洞内に駆け込んだ。

「た、た、大変だぁ! 
門の外に天上界の将軍がやってきて、
降参せよと叫んでおります」

悟空 「よし、おれの装束を持ってこい」

頭には紫金のかんむり、身には黄金のよろい兜、
足には歩雲 (ほうん) のくつ、手には如意棒・・・。
身支度をととのえるや

「ものども続け!」

とばかり、洞門を飛び出して、陣形を固める。
 フンとせせら笑った巨霊神、

「この斧を受けてみよ」

と、まっこうから打ちかかったが、悟空の方は
余裕しゃくしゃく。如意棒を振るって迎えうち、
ひるむところを一撃すれば、相手の斧は
ポキッとまっぷたつ。

 ほうほうのていで逃げ戻った巨霊神、
はあはあ息を切らせながら、李天王の前に手をついた。

「弼馬温は、たいした神通力です。
到底かなわず、逃げ戻りました。どうぞお裁きを!」

李天王 「ええい、おまえのおかげで気勢がそがれる! 
      そこへなおれ。斬ってくれよう」

 いきまくところを哪吒太子が押しとどめた。

「父上、しばらく。 こんどはわたくしが出陣し、
きゃつの手のうちを確かめて参ります」

 よろい兜に身を固めた哪吒太子は、本陣を飛び出すと、
まっしぐらに水簾洞に向かった。
 悟空の方は、兵をおさめ引き上げるところだったが、
哪吒太子の あっぱれな武者ぶりを見て、足を止めた。

悟 空 「ようよう、どこの小せがれだい。
      こんなところで何をしようってんだ?」

哪 吒 「ばけ猿め! とくと見よ! 
      托塔天王の第三太子、哪吒を知らぬか。
      天帝の命により、きさまを捕らえに参ったぞ」

悟 空 「おいおい、坊や。 歯も生え揃わなきゃ、
      産毛も生え替わってもねえくせに、
      とんだ大口を叩くじゃねえか。
      しばらくの間は命を預けてやるからな、
      あの旗になんて書いてあるかをよく見ておけ。
      おうちに帰ったら天帝に申し上げるんだぞ。
      この官職を寄越せば騒ぎを起こさず
      帰順してやるが、さもなきゃ霊霄殿に
      暴れ込んでやるぞってな」

哪吒太子が振り仰ぐと 「斉天大聖」 と書いてある。

「ばけ猿め。神通力を鼻にかけて、こんな称号を語るとは!
こけおどしには乗らぬ。 この剣をくらえ」

悟空 「ほら、おれはじっと立っている。 
      勝手にかかってこいよ」

こうまでからかわれ哪吒太子は猛り狂った。

「変れ!」

と、一声叫べば たちまち三頭六臂 (さんとうろっぴ)
 ------ 頭が三つ、腕が六本の恐ろしい姿に変った。
六つのその手に持つ武器は

  斬妖剣 (ざんようけん)
  砍妖刀 (かんようとう)
  缚妖索 (ばくようさく)
  降妖杵 (こうようしょ)
  绣球 (しゅうきゅう)
  火輪 (かりん)

の六種。

これらをふりかざし、しゃにむに斬ってかかる。
 悟空は内心びっくり仰天。

「ほう、若造のくせに、味な真似をしやがる。
こいつは挨拶しなくちゃな。
そうれ、こっちも神通力だ」

これまた

「変れ!」

と叫んで三頭六臂に早変わり。
如意棒も三本増やしてこれを六本の腕であやつる。
 両者互いに秘術を尽くし、打ち合うこと三十合あまり。
哪吒太子の六種の武器が千変万化すれば、
悟空の如意棒も千変万化。
互い秘術を尽くし、空中に火花を散らせど、
いっこうに勝負がつかない。

だが、悟空はさすがにすばしっこい。
混戦のさなかに身体の毛を一本引き抜き

「変れ!」

たちまち悟空の分身が現れた。
手に棒を奮い、哪吒太子に立ち向かう。
すかさず本物の悟空は相手の背後に回り込む。
左腕めがけて打ち込んだ。

びゅう!
風を切る音に、哪吒太子はあわてて身をかわしたが、
時すでに遅かった。
一発食らって、ほうほうのていで逃げ帰った。

 こちらは本陣の李天王。
助勢を繰り出そうとする矢先に、
太子が戻ったものだから、さすがに真っ青になった。

李天王 「うーむ。
      やつにこれほどの神通力があろうとは。
      どのように攻めたものだろう」

哪 吒 「やつは、洞穴の前に
      斉天大聖と書いた旗を立てて、
      こうほざいております。
      天帝がこの官職を寄越せばよし、
      さもなくば霊霄殿に暴れこむぞ、と」

李天王 「やむをえぬ。
      ひとまず天上界に引き上げて、
      このことを上奏しよう。兵力を補強した上で、
      ひっとらえにきても遅くはあるまい」

 李天王と哪吒太子は、天上界に引き上げたが、
この話はひとまず置く。
[PR]
# by seiten_taisei | 2001-04-03 00:00 | 児・天上界大混乱の巻

斉天大聖 (せいてんたいせい) その2

悟 空 「おーい、みんな! 今帰ったぞ」

 悟空が大声をあげると、猿たちはいっせいに集まってきて、地面にひざまづいた。早速酒を用意して、歓迎の宴会。

一 同 「大王、おめでとうございます。
      天上界へ行かれてはや十数年、
      さぞかし御栄達のことでしょう」

悟 空 「なに、十数年? 
      半月ばかり留守をしただけじゃないか」

一 同 「大王は天上界におられたので、
      月日が経つのがわからないんで。
      天上界の一日は、下界の一年ですよ。
      ところで、どんな官職をちょうだいしました?」

悟 空 「いやいや、それがなんとも、みっともない話でさ。
      天帝ときたら、人の使い方も知らん。
      こともあろうに、この俺を弼馬温なんかに
      しやがった。着任したはじめは、なにもわからず、
      がむしゃらに働いたが、
      今日、仲間に聞いてみりゃ、弼馬温っていうのは、
      ただの馬番で、規格外だとよ。
      馬鹿にするなってんで、宴会の席をひっくり返し、
      ケツをまくって戻ってきたわけよ」

一 同 「それでこそ大王。よくぞお帰りくださった。
      この別天地で大王とあがめられるのが一番。
      いまさら馬番なんかやる手はありませんよ
      ----------- おーい、若いの、酒だ酒だ、
      大王をおなぐさめしろ」

 宴もたけなわになった頃、取り次ぎ係が入ってきて、

「大王様、独角鬼王(どっかくきおう)が
お目にかかりたいと参っております」

悟 空 「これへとおせ」

 鬼王(きおう)が衣服を整えて入って来て、
ははあ、とひれ伏した。

悟 空 「なんの用だ」

鬼 王 「ええ、うたけまわれば、大王は天上界の
      一員として、この度 故郷に錦を飾られたよし。
      お祝いのしるしに、赭黄袍 (しゃこうほう) 
      一着を持参致しました」

 見れば、目も覚めるようなオレンジ色の、礼装用の上着。悟空はすっかり気をよくして、早速着込んだ。

鬼 王 「ところで大王、
      ながらく天上界におられましたが、
      どんな官職に就かれたので?」

悟 空 「天帝のやつ、見くびりやがって、
      弼馬温なんかにしやがった」

鬼 王 「大王ほどの神通力がありながら、馬番とは!
      『斉天大聖』 (せいてんたいせい) を
      さずけられてもおかしくはありませんぞ」

悟 空 「なに、斉天大聖?
      ”天と斉 (ひと) しい大聖” か。これはいい。
      おい、おまえたち、急いで旗を用意しろ。 
      『斉天大聖』 と大きく書いて、旗竿にかけるんだ。
      よいか、これからおれは、斉天大聖と名乗る。
      大王なんて呼ぶんじゃないぞ。
      妖王どもによく伝えて、
      間違えないよう気をつけさせろ」

  こうして悟空は 斉天大聖孫悟空となった。
[PR]
# by seiten_taisei | 2001-04-02 00:00 | 児・天上界大混乱の巻

斉天大聖 (せいてんたいせい) その1

ところで悟空の觔斗雲は、性能が段違いに優れている。
スタート直後からぐんぐんスピードをはやめて、
ひと足先に天上界の南天門についてしまった。
雲をおさめて入ろうとすると、やり、刀、剣、ほこなどで
武装した天兵の一隊が前に立ちはだかった。

悟 空 「くそっ、あのいんちきおやじめ! 
      俺様を呼んでおきながら、こんな歓迎をするとは、
      どういうことだ」

 あたりちらしているところへ、やっと金星が追いついた。

悟 空 「やいやい、じじい。よくも俺様をだましたな。
      天帝のまねきだとかなんとか、うまいこと
      おだてやがって。来てみりゃ、
      とおせんぼじゃねえか」

金 星 「まあまあ大王、そう怒りなさるな。
      天兵にしてみれば、なじみのないものを
      勝手に入らせるわけにはいかんのじゃ。
      これかにおまえさんは天帝にお目見えし、
      仙人名簿に登録されて官位をさずかる。
      そのときこそ、出入りは自由なのじゃから」

悟 空 「やだよ誰がいくもんか」

金 星 「まぁそういわずに、わしについておいで」

 金星は天門に近づき、声高によばわった。

「かたがた、お通しくだされ。このものは下界の仙人。
それがし、天帝の命令でお連れしたのだ」

 天兵たちは、さっと武器をひっこめて道をあける。
これを見て悟空もやっと納得し、
金星の後から門をくぐった。
 さて、太白金星は、悟空を連れて
霊霄殿(れいしょうでん)につくと、さっそく進み出て、
うやうやしく礼拝した。悟空の方は、そばにつっ立ったまま、
礼拝もしないで、金星の報告に聞き耳を立てている。

金 星 「おことばによりまして、
      妖仙を召し連れて参りました」

天 帝 「妖仙はいずれにおる」

 ここではじめて悟空は、ぴょこんとあたまを下げて、

「ここにいるよ」

この返事に、なみいる仙人たちは顔色を変えた。

「この山猿め!礼拝もしないで ”ここにいるよ!”
とは、なんたる不敬! 死罪だ、死罪だ!」

天 帝 「まあよい。孫悟空とやらは、
      下界の妖仙。人間の仲間入りをしたばかりで、
      宮廷の作法を心得ぬのだ。
      ここは大目に見てやるがよい」

「さあ、お礼を申し上げるのだ」

と、臣下たちからうながされて、悟空もはじめて、
その場にひれ伏した。天帝が左右の臣下に、
官職をさずけるよう指示をくだす。

臣 下 「天宮には、どこにも欠員はありません。
      御馬監(ぎょばかん)の長官、
      弼馬温(ひつばおん)の役が空席となっている
      だけです」

天 帝 「そうか。では、その弼馬温に任ずるとしよう」

 一同がはーっとひれ伏したので、
悟空はなんとなく受けてしまった。そこで天帝は、
即金のものに命じて、悟空を役所へ案内させる。
 いまや、悟空の張り切りぶりは大変なもの。
着任すると、さっそく大小の役人を集めて、
事務の打ち合わせをやった。
天馬は千頭いるとの報告である。
悟空は帳簿をもとに、いちいち頭数を確かめ、
あらたに役人達の割り振りを決めた。
 それからというもの、日夜、寝食を忘れて馬の世話に
あたった。天馬はすっかりなつき、悟空の姿が見えると、
耳をぴくつかせ、ひづめを蹴立てて、すり寄ってくる。
どの馬も、毛色も艶やかに肥えふとってきた。
 こうしていつしか半月あまりが過ぎ去った。
ある日、悟空の着任祝いと、慰労をかねて、
宴会が開かれた。
 宴もたけなわのころ、悟空はふとさかずきを置いて、

「ところで、この弼馬温という官職は、どのくらい偉いんだ?」

一 同 「つまり、そういう役目なんです」

悟 空 「いや、位はどのくらいだと、聞いているんだ」

一 同 「とてもじゃありません」

悟 空 「なに、とてもじゃない? 
      よほど位が高いんだな」

一 同 「いいえ、とんでもない。規格外というやつで」

悟 空 「規格外?」

一 同 「びりっかすですよ。
      下っ端も下っ端、ただ馬の番をする役目です。
      長官は、おいでになってからというもの、
      熱心に働かれ、馬も肥えふとりましたが、
      せいぜい 『よしよし』 と誉められるくらいが
      関の山。反対に馬が痩せようものなら、
      小言をくらうし、病気にでもさせようものなら、
      厳罰をくらいますよ」

 悟空はたちまちカーッとなって、歯をむき出した。

「ちくしょう! よくも見くびってくれたな!
俺は花果山じゃあ大王とあがめられる身分。
その俺様をだまして、馬番なんかやらせやがって。
やめたやめた。俺はでていくぞ」

 ガラガラッとテーブルをひっくり返すなり、
耳から例の宝物を取り出し、おわんほどの太さにすると、
びゅんびゅん振り回しながら、御馬監を飛び出して、
南天門へとまっしぐら。天兵たちは、彼が仙人簿に
登録されている弼馬温であることを知っていたので、
こんどは黙って通してしまった。
 ほんのひと飛びで雲をおろせば、そこはもう花果山。
いましも四健将と妖王たちが、軍事教練の真っ最中だった。
[PR]
# by seiten_taisei | 2001-04-01 00:00 | 児・天上界大混乱の巻

如意金箍棒 (にょいきんこぼう) その5

 さて、話変わって、こちらは全世界に君臨する天帝。
 ある日、霊霄殿(れいしょうでん)で政務をとっていると、

臣 下 「東海竜王が上奏文を持って、
      おめどおりを願っています」

天 帝 「よろしい。ここへ通しなさい」

 東海竜王が入ってきて、上奏文を差し出す。
それには、悟空が竜宮へやってきて、
武器とよろい兜を無理矢理奪って行った件が
しるしてあって、最後に

「どうか天兵をつかわして、あの化け物を退治し、
平和を取り戻して戴く様、心よりお願い致します」

と結んである。

天 帝 「帰って待つがよい。朕(ちん)が
      将(しょう)をつかわして捕らえるであろう」

 東海竜王が帰ると、天帝はそばのものに尋ねた。

天 帝 「そのバケ猿は、いつ生まれ、何代をへて、
      そのような術を身につけたのか」

 千里眼(せんりがん)と順風耳(じゅんぷうじ)が
進み出て、

「この猿は三百年前に生まれた石猿です。
大したやつではなかったのですが、いつのまにか
仙術をおさめ、あばれまわっているもののようです」

天 帝 「では、誰を征伐につかわせばよいか」

 この時太白金星(たいはくきんせい)がすすみでた。

「おそれながら申し上げます。その猿も、
仙術をおさめたうえは人間とかわりはございません。
慈悲をお与えくださいますよう。
武力でおさえつけるのではなく、天上界に呼び寄せては
いかがなものでしょう。適当な官職につけたうえ、
天命に従うならば賞を与え、もし天命にそむくようでしたら、
そのときこそ、ひっとらえるまでのこと」

天 帝 「なるほど。ではおまえが使者になるがよい」

 命をうけた太白金星、南天門の外で雲に乗り、
まっすぐ花果山水簾洞にやってきた。
門のそとにいた小猿たちにむかって

「これこれ、わしは天から参った使いじゃ。
天帝の手紙を持っておる。天帝はおまえたちの
大王をお召しになったのだ。さぁ、早く取り次ぎなさい」

 その小猿が次の小猿へ、
次の小猿がその次の小猿へ、
順ぐりに伝えていって、一番奥の小猿が悟空に取り次ぐ。

「大王、門の外に年寄りが来て、天帝の使いで
大王を呼びに来たって、言ってますよ」

悟 空 「そいつはいいや。ちょうど天に
      遊びに行きたいと思っていたとこだ。
      すぐ、通してくれ」

 いそいで正装して迎えに出る。
 太白金星はずいと、中に入ると、上座について、
おごそかな口調で、

「われは西方の太白金星であるぞ。
天帝のみことのりを奉じ、なんじを天上界に召しに参った」

悟 空 「ありがたきしあわせ。……これ、おまえたち、
      宴会のしたくをしろ」

金 星 「いや、おかまいくださるな。
      きょうは天帝のお使いじゃから、長居はできん。
      さっそく同道ねがいたい」

 そこで悟空は、長老猿を呼んで、

「あとのことは頼んだぞ。
おれはちょっと天上界の様子を見てくる。
後でおまえたちも連れて行くからな」

 こうして悟空と太白金星は、それぞれ雲をおこし、
はるか空の上へとのぼっていった。
[PR]
# by seiten_taisei | 2001-03-31 11:58 | 児・花果山水簾洞の巻

如意金箍棒 (にょいきんこぼう) その4

 さて、水簾洞へ引き上げた悟空は、
手下の猿にかこまれて、上機嫌だった。
猿たちは、如意棒を持ち上げようとするが、
トンボが鉄柱に止まったようなもので、
びくともしない。

猿たち 「すげえなあ、こんな重いもの、
      どうやって持ってきたんだい」

 悟空はそばへ寄って
ひょいと持ち上げてみせ

「この宝も、これまで持ち主に巡り会えなかったのさ。
竜王は、鉄の塊だと思って何千年も蔵の中に転がしといた。
ところが、今度おれが行ったら、その鉄が
ぴかぴか光り出したってわけだ」

 ひととおり、いきさつを説明すると、
次に実演をやってみせた。

悟 空 「ちいさくなれ、ちいさくなれ」

 棒はたちまち、縫い針ほどの大きさになる。
悟空はそれを耳の中にしまった。
猿たちの拍手喝采に応えてもう一度取り出し、
こんどは手のひらに乗せる。

悟 空 「おおきくなれ、おおきくなれ」

 針はぐんぐん伸びてたちまちもとの鉄棒になる。
悟空はすっかり夢中になって、橋を渡り水簾洞の外へ
飛び出した。 
 棒を手にして神通力を使いながら「のびろ!」とひと声。
悟空の身体は、みるみる一万丈の高さ。
振り仰げば頭は泰山(たいざん)と見まごうばかり。
腰のあたりは、けわしい峰を思わせる。
目は稲妻、ぱっくり開いた口に、つるぎのような歯が並ぶ。
手にした棒はといえば、上は天に、
下は地獄にとどかんばかり・・・。
花果山の動物たちも、妖怪も妖王も、
ふるえおののきながら、この姿を伏し拝むのだった。
 悟空はすぐにもとの姿にもどり、
棒は縫い針にして耳にしまって、水簾洞に戻った。
全山の妖王が祝賀にかけつけ、
飲めやうたえの大宴会となった。
 その後、悟空は、水簾洞のことは
四匹の長老猿に任せることにした。
すなわち、二匹の赤尻猿は馬元帥(ばげんすい)と
流元帥(るげんすい)、
二匹の通背猿は崩将軍(ほうしょうぐん)と
芭将軍(はしょうぐん)、それぞれ位につけて、
軍事、賞罰をこの四匹に代行させ、
四健勝(しけんしょう)と呼ぶことにした。
そして、自分はこまごまとした雑用をはなれて勝手きまま、
西へ東へ、雲を飛ばしては、英雄、豪傑、賢才と
交わりをむすんだのであった。
なかでも、つぎの六人、 牛魔王(ぎゅうまおう)、
蚊魔王(こうまおう)、鵬魔王(ほうまおう)、
獅駝王(しだおう)、瀰猴王(みこうおう/ 瀰 は、
さんずい ではなく けものへん)、
偶戎王(ぐしゅうおう/戎 は、けものへん がつく) とは、
義兄弟のちぎりをむすび、
これに美猴王 (びこうおう・悟空のこと) を加えた
七兄弟は、毎日集まっては話し合い、
酒を酌み交わしたのである。
[PR]
# by seiten_taisei | 2001-03-21 21:22 | 児・花果山水簾洞の巻

如意金箍棒 (にょいきんこぼう) その3

 そこへ現れたのは、竜王の夫人と娘。
竜王に近づいて、

「ねぇ王様、奥の蔵に神珍鉄(しんちんてつ)が
しまってあるでしょ。ほら、天の河(あまのがわ)の
底がために使うっていう・・・。 
あれが二、三日前からぴかぴか光を出して、
瑞気がたちのぼっているのよ。ひょっとして、
このお方を待っていたのじゃないかしら」

竜 王 「あれはおまえ、むかし、禹(う)が
      洪水を治めたとき、海の深さを測るのに使った
      おもりだよ。 鉄のかたまりでは、
      武器の役にはたたないだろう」

夫 人 「かまわないわよ。ともかくあげちゃって、
      勝手にさせたらどう?
      こちらはお引取り願えれば、
      それでいいんですから」

それではと、竜王が悟空に話をする。

悟 空 「ここへ出してもらいたいな」

竜 王 「とてもとても、動かせるようなものではない。
      ご自分で行かれるがよろしい」

悟空「どこだい? 案内してくれよ」

 蔵に行ってみると、なるほど、
金色の光がいっぱいにみなぎっている。
 光を出しているのは、一本の鉄柱、
太さは一斗升ほど、長さは二丈あまりである。
悟空は、そでをまくりあげて近寄ると、
両手でそれをたたいてみた。

悟 空 「もう少し細くて短いといいんだけどな」

つぶやいたとたんに、鉄柱はするするとちぢまった。

悟 空 「まだちょっと太すぎるな」

ゆすりながら言ってみると、すーっと細くなる。
悟空は大喜びで、蔵からだして念入りに眺めてみた。
真っ黒な鉄棒の両端に、金のたががはまっていて、
そのそばに文字が彫ってある。

 如意金箍棒、重さ 一万三千五百斤

悟 空 「如意か。なるほど意の如しだ。
      この棒は、おれの考えどおりの太さになるんだな」

 歩きながら、手でゆさぶって

「短くなれ、細くなれ」

鉄棒は長さ二畳、太さはおわんくらい、
ちょうど手ごろの大きさになる。
その如意棒をびゅんびゅん振り回しながら、悟空は
水晶宮に戻ってきた。竜王や家来たちは、
びくびくしながらそれを見ている。

悟 空 「こいつはいいや、どうもありがとさん。
      だけど、こうなると身なりが合わないな。
      ついでのことに、よろいかぶと一式を戴きたい」

 無理難題をふっかけられて、竜王は大よわり、
しかたなしに弟を呼び寄せた。
弟というのは、南海竜王、北海竜王、西海竜王の
三人である。
はなしを聞いて西海竜王、

「にいさん、ここはおとなしく聞いてやろう。
あとで天帝に訴えれば、きっととっちめてくれますよ」

そこで北海竜王が歩雲履(ほうんり)というくつ、
西海竜王が黄金のよろい、南海竜王が紫金の冠、
それぞれを持ち寄って、悟空に差し出した。
悟空は大喜びで着用におよぶと、
如意棒をふりまわしながら

「それじゃ、あばよ」

 悟空が帰っていくと、竜王たちは訴状を作り、
天帝におそれながらと訴え出たが、それは後日の話。
[PR]
# by seiten_taisei | 2001-03-20 01:43 | 児・花果山水簾洞の巻

如意金箍棒 (にょいきんこぼう) その2

 あくる日、全山の猿に集合命令を出すと、
あつまった猿はなんと四万七千匹。
これがみんな武器を持って並んだのだから、
驚いたのはほかの動物の妖王(ようおう)。
花果山には、オオカミ、虎、ヒョウ、シカ、キツネ、タヌキ、
ムジナ、獅子、象、ショウジョウ、熊、カモシカ、その他、
あわせて七十二種類の妖王がいたが、
みな悟空のところへ飛んできて、服従を誓った。
 それからというもの、妖王たちも太鼓を鳴らし、
旗を立てて、鎧に身をかためて、訓練に加わった。
花果山は毎日ドンドン、ジャンジャンの大騒ぎである。
 悟空は大満足だったが、そのうちに、ふと思いついた。

悟 空 「みんな、弓もやりもうまくなったな。
      だがおれの刀はどうも使いにくい。
      なんとかならんもんかな」

長 老 「いまや大王は神仙(しんせん)の身、
      普通の武器では役に立ちません。
      そこで大王、ひとつお伺いしたいが、
      大王は水にもぐれますかな」

悟 空 「もちろんだ。天にものぼれば、
      地にももぐる。水にもおぼれないし、
      火にも焼けない。どこへだって行けるぞ」

長 老 「それなら、竜王をたずねて行けばよろしい。
      水簾洞の水は、東海の竜宮まで
      通じております。あそこへ行けば、
      何かお気に召すものが見つかるかと
      思いますが」

 さっそく橋の上から水に飛び込む。
閉水(へいすい)の術を使って水をおしわけながら、
東海の底へ。
おりからパトロール中の竜宮の警備兵が声をかけた。

「いずれの神仙でござる。お名乗りあれば、
ご案内いたそう」

悟 空 「花果山の孫悟空だよ。
      竜王とは隣同士だぜ。知らねぇって言うのかい?」

あわてて警備兵が報告に戻る。
東海竜王は、悟空を水晶宮(すいしょうきゅう)に
迎え入れた。

竜 王 「ようこそ、おいでなされた。
      して、ご用のむきは?」

悟 空 「山洞(さんどう)を守らなきゃならねぇんだが、
      あいにくと、ろくな武器がなくてね。
      ここなら何しろ竜宮だ。 
      余分にあるに違いないっていうんで、
      戴きに参上したわけですがね」

竜王も断るわけにいかず、
ひとふりの太刀を持ってこさせた。

悟 空 「どうも刀ってやつは苦手なんで。
      ほかのものがいただきたい」

こんどは家来が二人がかりで、なにやら担ぎだしてくる。
これは九股叉(きゅうこさ)といって、先が九本に分かれた
フォークのばけものみたいなやつ。
悟空はひょいと受け取って、ひとふりくれると、
ポーンと投げ出した。

悟 空 「こりゃ、軽すぎらぁ」

竜 王 「えっ、なんと! 
      これは三千六百斤もあるのですぞ」

悟 空 「いや、お話になりませんな」

竜王も、これには驚いた。びくびくしながら
家来に命令する。やがて、担ぎ出されたのは
方天戟(ほうてんげき)といって、枝付きのほこ。
これは重さが七千二百斤ある。
走りよって受け取った悟空、
そいつをびゅうびゅう打ち振って、ドンとつき立てた。

「まだまだ軽い」

竜 王 「ややや、これが一番重いというのに!
      竜宮には、これ以上のものはありませんぞ」

悟 空 「いやいや、ごけんそん。
      昔から、宝物なら竜宮っていうくらいなもの。
      もっとよく探してもらいたいね。
      いいのがありゃ、金は払うから」

竜 王 「いや、ほんとうにもうないのだ」
[PR]
# by seiten_taisei | 2001-03-17 10:33 | 児・花果山水簾洞の巻

如意金箍棒 (にょいきんこぼう) その1

 混世魔王を退治してから、悟空は、
猿たちの軍事訓練を始めた。
小猿たちに木や竹で武器を作らせると、旗や笛を合図に、
猿の兵隊を進ませたり、退かせたり。
だが、しばらくやっているうちに、だんだん不安に
なってきた。

悟 空 「うっかりすると、ほんとうに戦争になるかも
      しれんぞ。人間かけものか、どれかが
      先手をうって攻めてくるかもしれないからな。
      そうなったら、こんな木や竹の武器じゃ
      かないっこない。さてどうしたもんだろう」

 そこへ、赤尻猿(あかしりざる)二匹、
通背猿(つうはいざる)二匹、あわせて四匹の
長老が進み出た。

「大王、武器を手に入れるのはわけもないことです。
東へ二百里も行けば、傲来国、
その都には軍隊が駐屯しております。
 きっと武器を作る職人もおりましょう。
そこへ行かれて武器を買うなり
作らせるなりなさればよろしい」

 悟空は觔斗雲に飛び乗って、ちょいとひと飛び。
都に着くと術を使って傲来国の武器庫に入り込む。
刀、やり、剣、げき、斧、まさかり、鎌、むち、弓、
いしゆみ、ほこ・・・。なんでも揃っている。

悟 空 「こいつはいいや、全部いただきだ。
      だけど、ひとりで運ぶのは面倒だな」

ことつかみ毛を引き抜き、くちゃくちゃかんで、
ぷっと吐き出す。千匹以上の小猿が現れ、
次々に武器を運び出す。たちまち武器庫は
からっぽになった。
まるごと雲に乗せて、一気に水簾洞に戻る。
ぶるっとゆすって毛をからだにつけ、武器を積み上げた。

悟 空 「さあみんな、とりにこい」

 猿たちは、わっと駆け寄り、
てんでに刀や弓を手に取る。
いろんな武器をいじくりまわすうちに、その日は暮れた。
[PR]
# by seiten_taisei | 2001-03-16 20:40 | 児・花果山水簾洞の巻

悟空の修行 (ごくうのしゅぎょう) その5

  猿  「大王、どんなに待ったか知れねえぜ。
      俺たち、ひでえ目に遭っているんだ。
      妖怪が一匹出てきやがって、そいつが、俺たちの
      水簾洞を横取りしようとしやがる。
      俺たち命懸けで闘ったけど、
      家財道具はかっぱらわれるし、
      子猿も随分連れてかれちゃったんだ。
      大王が来てくれなかったら、
      水簾洞は危なかったぜ」

悟 空 「どんな妖怪だ。すぐ、仇をとってやるぞ」

猿 達 「混世魔王(こんせいまおう)とか言ってたよ。
      まっすぐ北の方から来るんだけれど、
      いつも雲や霧を起こしちゃ来やがるんで、
      詳しい場所は わからないんだ」

悟  空「よし、もう心配するな。俺が突き止めてやる」

 トンボ返りをうつと、北へまっしぐら。
見れば下には嶮しい山がそびえている。
雲からおりれば、山の彼方に水臓洞(すいぞうどう)
という洞門があった。
門の前では妖怪の手下が二、三匹跳ね回っていたが、
悟空を見つけて、奥に注進に及ぶ。
 やがて姿を現した混世魔王。

「どいつだ、水簾洞の親玉は?」

悟 空 「でけえ目をしやがって、
      この孫さまが見えないのか」

混世魔王「わっはっは、なんだ、こんなチビか。
      まだ子供だろう。武器も持たずに、
      この俺様に歯向かおうっていうのか。
      よしよし、俺も刀はやめにしよう」

悟 空 「よし、こい」

 魔王が身構えて打ちかかれば、
悟空は胸元に飛び込んで、打ちつ打たれつの接近戦。
こうなると小さい方が有利で、
悟空のパンチがビシビシ決まる。
 魔王、たまらずに、足元の刀を拾い上げ、
まっこうから打ちかかった。
ひらりと身をかわした悟空。からだから、
ひとつまみ毛を抜くと、口に入れて噛み砕き、
空に向かってプッと吹いて

「変われ!」

と、ひと声。毛はたちまち二、三百の小猿に変わり、
魔王を取り囲んだ。これぞ分身の術。
悟空の体の八万四千本の毛は、一本一本、
悟空が「なれ」というものに変わる。
道をおさめた悟空には、こういう新能力が備わっていた。
 この小猿たちがまたすばしっこい。
ひょいひょいと刀をくぐって、魔王にとびつく。
股ぐらにもぐる、足をひっぱる、目玉をほじくる、
鼻をひねる。
よってたかって、ひっくり返し、ふくろだたき。
 ここで悟空が近寄って、魔王の刀を取り上げる。
小猿をどかせて、脳天へ一太刀浴びせれば、
魔王はまっぷたつ。勢いに乗って
洞門の中へなだれ込み、手下の妖怪どもを、
きれいさっぱり片付けた。
 さて、ぶるっとからだの毛をふるうと、小猿たちは、
毛になって、悟空のからだに戻る。ところが見ると、
まだ四、五十匹残っているのがいる。
これは水簾洞から魔王にさらわれてきた子猿だった。

子 猿 「大王、来るときは、
      耳元でぴゅーって音がしたら、
      もうここについていたんで、
      道がわからないんだよ。
      帰りはどうすればいいだろう」

悟 空 「心配するな。目をつむってるんだ」

 呪文をとなえて、雲を起こし、風とともに水簾洞へ。

悟 空 「みんな、目をあけろ」

 猿たちは、そこが故郷であるのに気づくと大はしゃぎ、
出迎えた猿たちと、再会を喜びあった。
酒さかなを用意して、さっそく祝賀会。

猿 達 「大王、いったいどこで、
      あんな術をおぼえてきたんです」

悟 空 「西牛賀州で運よく、
      ひとりの老先生に出会ってな、
      修行したおかげで、天と寿命が同じになって、
      不老長寿の術を授かったのだ。
      それからおまえたち、
      ひとつ、めでたいことがある。
      われわれには、孫という姓ができたぞ」

猿 達 「それじゃ、大王も俺たちも、
      みんな孫っていうわけですね」

 一同、大喜びで、ヤシ酒やブドウ酒をくみかわした。
[PR]
# by seiten_taisei | 2001-02-25 00:00 | 児・花果山水簾洞の巻

悟空の修行 (ごくうのしゅぎょう) その4

悟 空 「それじゃあ先輩、なんに化けたらいいか、
      ひとつ課題を出してください」

弟子達 「松の木はどうだい」

 悟空は印(いん)を結び、呪文を唱えた。
身体をひとゆすり、たちまち一本の松の木に変わった。
一同、やんや、やんやの大喝采。と、そのとき

「誰だ、騒いでおるのは」

 奥から杖をついて出てきたのは須菩提祖師。
弟子たちは、みんなあわてて、真面目な顔をとりつくろう。
悟空ももとの姿に戻ってみんなの中にまぎれこみ、

「申し上げます。ただいま、みんなで議論をしておりました」
 
祖  師 「何をいうか。ワイワイガヤガヤ、
      それで修行ができるか。
      いったい何を騒いでおったのじゃ」

弟子達 「じつは、悟空が松にばけましたので、
      みんなで拍手喝采をしました」

 これを聞くと、須菩提祖師は弟子達をさがらせ、
悟空を呼び寄せた。

祖 師 「どうして、そんなことをしたのじゃ。
      術というものは、滅多なことで、人に
      見せるものではない。
      見れば誰でも教わりたくなるし、
      教えなければ無理にも教わろうとする。
      ついには危害を加えたりするのじゃ。
      それでは命をまっとうすることは難しくなる」

悟 空 「先生、どうかお許しください」

祖 師 「おまえを責めておるのではないが、
      こうなっては、おまえの命が危ない。
      ここに留まるわけには、いくまい」

 言われて悟空、涙をポロポロ流した。

「先生、どこへ行けとおっしゃるんです」

祖 師 「来たところへ、戻ればよかろう」

悟 空 「来たところ?あっ、そうだ。
      わたしは東勝神州の傲来国、
      花果山水簾洞から来たのでした」

祖 師 「早く、そこへ帰るのだ。
      いのちをまっとうするがよい。
      だが、よいか。これだけは、忘れてはならぬぞ。
      ここを去ってからのち、
      わしの弟子であったなどと、ひとことなりと
      申してはならぬ。口を滑らせば、
      わしにはすぐわかるのじゃ。
      おまえの皮をはぎ、骨を砕き、たましいを
      地底の彼方へ追いやって、
      絶対生まれ変わらぬようにしてやるぞ」

悟 空 「はい。けっして先生のお名前は出しません」

 こうして一同に別れを告げた悟空は、
觔斗雲に乗って、一路、東へ向かった。
 ひとときも経たぬうち、下に花果山水簾洞が見えてきた。
二十年まえ、ここを出たときは、
凡骨凡体(ぼんこつぼんたい)、
何のかわりばえもしない普通のからだ、
それがいまや道を得て、軽々と空を飛んでいる。
悟空はたまらなく愉快だった。
 雲をおろして着陸し、山へ入って行くと、
どうしたことだろう、
猿たちの悲しげな声が聞こえる。

悟 空 「おーい、今帰ったぞ」

 声をかけると、岩あな、草むら、林のなか、
ありとあらゆるところから、大猿小猿が何千となく
あらわれて、悟空のまわりに集まった。
[PR]
# by seiten_taisei | 2001-02-20 00:00 | 児・花果山水簾洞の巻