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如意金箍棒 (にょいきんこぼう) その5

 さて、話変わって、こちらは全世界に君臨する天帝。
 ある日、霊霄殿(れいしょうでん)で政務をとっていると、

臣 下 「東海竜王が上奏文を持って、
      おめどおりを願っています」

天 帝 「よろしい。ここへ通しなさい」

 東海竜王が入ってきて、上奏文を差し出す。
それには、悟空が竜宮へやってきて、
武器とよろい兜を無理矢理奪って行った件が
しるしてあって、最後に

「どうか天兵をつかわして、あの化け物を退治し、
平和を取り戻して戴く様、心よりお願い致します」

と結んである。

天 帝 「帰って待つがよい。朕(ちん)が
      将(しょう)をつかわして捕らえるであろう」

 東海竜王が帰ると、天帝はそばのものに尋ねた。

天 帝 「そのバケ猿は、いつ生まれ、何代をへて、
      そのような術を身につけたのか」

 千里眼(せんりがん)と順風耳(じゅんぷうじ)が
進み出て、

「この猿は三百年前に生まれた石猿です。
大したやつではなかったのですが、いつのまにか
仙術をおさめ、あばれまわっているもののようです」

天 帝 「では、誰を征伐につかわせばよいか」

 この時太白金星(たいはくきんせい)がすすみでた。

「おそれながら申し上げます。その猿も、
仙術をおさめたうえは人間とかわりはございません。
慈悲をお与えくださいますよう。
武力でおさえつけるのではなく、天上界に呼び寄せては
いかがなものでしょう。適当な官職につけたうえ、
天命に従うならば賞を与え、もし天命にそむくようでしたら、
そのときこそ、ひっとらえるまでのこと」

天 帝 「なるほど。ではおまえが使者になるがよい」

 命をうけた太白金星、南天門の外で雲に乗り、
まっすぐ花果山水簾洞にやってきた。
門のそとにいた小猿たちにむかって

「これこれ、わしは天から参った使いじゃ。
天帝の手紙を持っておる。天帝はおまえたちの
大王をお召しになったのだ。さぁ、早く取り次ぎなさい」

 その小猿が次の小猿へ、
次の小猿がその次の小猿へ、
順ぐりに伝えていって、一番奥の小猿が悟空に取り次ぐ。

「大王、門の外に年寄りが来て、天帝の使いで
大王を呼びに来たって、言ってますよ」

悟 空 「そいつはいいや。ちょうど天に
      遊びに行きたいと思っていたとこだ。
      すぐ、通してくれ」

 いそいで正装して迎えに出る。
 太白金星はずいと、中に入ると、上座について、
おごそかな口調で、

「われは西方の太白金星であるぞ。
天帝のみことのりを奉じ、なんじを天上界に召しに参った」

悟 空 「ありがたきしあわせ。……これ、おまえたち、
      宴会のしたくをしろ」

金 星 「いや、おかまいくださるな。
      きょうは天帝のお使いじゃから、長居はできん。
      さっそく同道ねがいたい」

 そこで悟空は、長老猿を呼んで、

「あとのことは頼んだぞ。
おれはちょっと天上界の様子を見てくる。
後でおまえたちも連れて行くからな」

 こうして悟空と太白金星は、それぞれ雲をおこし、
はるか空の上へとのぼっていった。
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by seiten_taisei | 2001-03-31 11:58 | 児・花果山水簾洞の巻

如意金箍棒 (にょいきんこぼう) その4

 さて、水簾洞へ引き上げた悟空は、
手下の猿にかこまれて、上機嫌だった。
猿たちは、如意棒を持ち上げようとするが、
トンボが鉄柱に止まったようなもので、
びくともしない。

猿たち 「すげえなあ、こんな重いもの、
      どうやって持ってきたんだい」

 悟空はそばへ寄って
ひょいと持ち上げてみせ

「この宝も、これまで持ち主に巡り会えなかったのさ。
竜王は、鉄の塊だと思って何千年も蔵の中に転がしといた。
ところが、今度おれが行ったら、その鉄が
ぴかぴか光り出したってわけだ」

 ひととおり、いきさつを説明すると、
次に実演をやってみせた。

悟 空 「ちいさくなれ、ちいさくなれ」

 棒はたちまち、縫い針ほどの大きさになる。
悟空はそれを耳の中にしまった。
猿たちの拍手喝采に応えてもう一度取り出し、
こんどは手のひらに乗せる。

悟 空 「おおきくなれ、おおきくなれ」

 針はぐんぐん伸びてたちまちもとの鉄棒になる。
悟空はすっかり夢中になって、橋を渡り水簾洞の外へ
飛び出した。 
 棒を手にして神通力を使いながら「のびろ!」とひと声。
悟空の身体は、みるみる一万丈の高さ。
振り仰げば頭は泰山(たいざん)と見まごうばかり。
腰のあたりは、けわしい峰を思わせる。
目は稲妻、ぱっくり開いた口に、つるぎのような歯が並ぶ。
手にした棒はといえば、上は天に、
下は地獄にとどかんばかり・・・。
花果山の動物たちも、妖怪も妖王も、
ふるえおののきながら、この姿を伏し拝むのだった。
 悟空はすぐにもとの姿にもどり、
棒は縫い針にして耳にしまって、水簾洞に戻った。
全山の妖王が祝賀にかけつけ、
飲めやうたえの大宴会となった。
 その後、悟空は、水簾洞のことは
四匹の長老猿に任せることにした。
すなわち、二匹の赤尻猿は馬元帥(ばげんすい)と
流元帥(るげんすい)、
二匹の通背猿は崩将軍(ほうしょうぐん)と
芭将軍(はしょうぐん)、それぞれ位につけて、
軍事、賞罰をこの四匹に代行させ、
四健勝(しけんしょう)と呼ぶことにした。
そして、自分はこまごまとした雑用をはなれて勝手きまま、
西へ東へ、雲を飛ばしては、英雄、豪傑、賢才と
交わりをむすんだのであった。
なかでも、つぎの六人、 牛魔王(ぎゅうまおう)、
蚊魔王(こうまおう)、鵬魔王(ほうまおう)、
獅駝王(しだおう)、瀰猴王(みこうおう/ 瀰 は、
さんずい ではなく けものへん)、
偶戎王(ぐしゅうおう/戎 は、けものへん がつく) とは、
義兄弟のちぎりをむすび、
これに美猴王 (びこうおう・悟空のこと) を加えた
七兄弟は、毎日集まっては話し合い、
酒を酌み交わしたのである。
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by seiten_taisei | 2001-03-21 21:22 | 児・花果山水簾洞の巻

如意金箍棒 (にょいきんこぼう) その3

 そこへ現れたのは、竜王の夫人と娘。
竜王に近づいて、

「ねぇ王様、奥の蔵に神珍鉄(しんちんてつ)が
しまってあるでしょ。ほら、天の河(あまのがわ)の
底がために使うっていう・・・。 
あれが二、三日前からぴかぴか光を出して、
瑞気がたちのぼっているのよ。ひょっとして、
このお方を待っていたのじゃないかしら」

竜 王 「あれはおまえ、むかし、禹(う)が
      洪水を治めたとき、海の深さを測るのに使った
      おもりだよ。 鉄のかたまりでは、
      武器の役にはたたないだろう」

夫 人 「かまわないわよ。ともかくあげちゃって、
      勝手にさせたらどう?
      こちらはお引取り願えれば、
      それでいいんですから」

それではと、竜王が悟空に話をする。

悟 空 「ここへ出してもらいたいな」

竜 王 「とてもとても、動かせるようなものではない。
      ご自分で行かれるがよろしい」

悟空「どこだい? 案内してくれよ」

 蔵に行ってみると、なるほど、
金色の光がいっぱいにみなぎっている。
 光を出しているのは、一本の鉄柱、
太さは一斗升ほど、長さは二丈あまりである。
悟空は、そでをまくりあげて近寄ると、
両手でそれをたたいてみた。

悟 空 「もう少し細くて短いといいんだけどな」

つぶやいたとたんに、鉄柱はするするとちぢまった。

悟 空 「まだちょっと太すぎるな」

ゆすりながら言ってみると、すーっと細くなる。
悟空は大喜びで、蔵からだして念入りに眺めてみた。
真っ黒な鉄棒の両端に、金のたががはまっていて、
そのそばに文字が彫ってある。

 如意金箍棒、重さ 一万三千五百斤

悟 空 「如意か。なるほど意の如しだ。
      この棒は、おれの考えどおりの太さになるんだな」

 歩きながら、手でゆさぶって

「短くなれ、細くなれ」

鉄棒は長さ二畳、太さはおわんくらい、
ちょうど手ごろの大きさになる。
その如意棒をびゅんびゅん振り回しながら、悟空は
水晶宮に戻ってきた。竜王や家来たちは、
びくびくしながらそれを見ている。

悟 空 「こいつはいいや、どうもありがとさん。
      だけど、こうなると身なりが合わないな。
      ついでのことに、よろいかぶと一式を戴きたい」

 無理難題をふっかけられて、竜王は大よわり、
しかたなしに弟を呼び寄せた。
弟というのは、南海竜王、北海竜王、西海竜王の
三人である。
はなしを聞いて西海竜王、

「にいさん、ここはおとなしく聞いてやろう。
あとで天帝に訴えれば、きっととっちめてくれますよ」

そこで北海竜王が歩雲履(ほうんり)というくつ、
西海竜王が黄金のよろい、南海竜王が紫金の冠、
それぞれを持ち寄って、悟空に差し出した。
悟空は大喜びで着用におよぶと、
如意棒をふりまわしながら

「それじゃ、あばよ」

 悟空が帰っていくと、竜王たちは訴状を作り、
天帝におそれながらと訴え出たが、それは後日の話。
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by seiten_taisei | 2001-03-20 01:43 | 児・花果山水簾洞の巻

如意金箍棒 (にょいきんこぼう) その2

 あくる日、全山の猿に集合命令を出すと、
あつまった猿はなんと四万七千匹。
これがみんな武器を持って並んだのだから、
驚いたのはほかの動物の妖王(ようおう)。
花果山には、オオカミ、虎、ヒョウ、シカ、キツネ、タヌキ、
ムジナ、獅子、象、ショウジョウ、熊、カモシカ、その他、
あわせて七十二種類の妖王がいたが、
みな悟空のところへ飛んできて、服従を誓った。
 それからというもの、妖王たちも太鼓を鳴らし、
旗を立てて、鎧に身をかためて、訓練に加わった。
花果山は毎日ドンドン、ジャンジャンの大騒ぎである。
 悟空は大満足だったが、そのうちに、ふと思いついた。

悟 空 「みんな、弓もやりもうまくなったな。
      だがおれの刀はどうも使いにくい。
      なんとかならんもんかな」

長 老 「いまや大王は神仙(しんせん)の身、
      普通の武器では役に立ちません。
      そこで大王、ひとつお伺いしたいが、
      大王は水にもぐれますかな」

悟 空 「もちろんだ。天にものぼれば、
      地にももぐる。水にもおぼれないし、
      火にも焼けない。どこへだって行けるぞ」

長 老 「それなら、竜王をたずねて行けばよろしい。
      水簾洞の水は、東海の竜宮まで
      通じております。あそこへ行けば、
      何かお気に召すものが見つかるかと
      思いますが」

 さっそく橋の上から水に飛び込む。
閉水(へいすい)の術を使って水をおしわけながら、
東海の底へ。
おりからパトロール中の竜宮の警備兵が声をかけた。

「いずれの神仙でござる。お名乗りあれば、
ご案内いたそう」

悟 空 「花果山の孫悟空だよ。
      竜王とは隣同士だぜ。知らねぇって言うのかい?」

あわてて警備兵が報告に戻る。
東海竜王は、悟空を水晶宮(すいしょうきゅう)に
迎え入れた。

竜 王 「ようこそ、おいでなされた。
      して、ご用のむきは?」

悟 空 「山洞(さんどう)を守らなきゃならねぇんだが、
      あいにくと、ろくな武器がなくてね。
      ここなら何しろ竜宮だ。 
      余分にあるに違いないっていうんで、
      戴きに参上したわけですがね」

竜王も断るわけにいかず、
ひとふりの太刀を持ってこさせた。

悟 空 「どうも刀ってやつは苦手なんで。
      ほかのものがいただきたい」

こんどは家来が二人がかりで、なにやら担ぎだしてくる。
これは九股叉(きゅうこさ)といって、先が九本に分かれた
フォークのばけものみたいなやつ。
悟空はひょいと受け取って、ひとふりくれると、
ポーンと投げ出した。

悟 空 「こりゃ、軽すぎらぁ」

竜 王 「えっ、なんと! 
      これは三千六百斤もあるのですぞ」

悟 空 「いや、お話になりませんな」

竜王も、これには驚いた。びくびくしながら
家来に命令する。やがて、担ぎ出されたのは
方天戟(ほうてんげき)といって、枝付きのほこ。
これは重さが七千二百斤ある。
走りよって受け取った悟空、
そいつをびゅうびゅう打ち振って、ドンとつき立てた。

「まだまだ軽い」

竜 王 「ややや、これが一番重いというのに!
      竜宮には、これ以上のものはありませんぞ」

悟 空 「いやいや、ごけんそん。
      昔から、宝物なら竜宮っていうくらいなもの。
      もっとよく探してもらいたいね。
      いいのがありゃ、金は払うから」

竜 王 「いや、ほんとうにもうないのだ」
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by seiten_taisei | 2001-03-17 10:33 | 児・花果山水簾洞の巻

如意金箍棒 (にょいきんこぼう) その1

 混世魔王を退治してから、悟空は、
猿たちの軍事訓練を始めた。
小猿たちに木や竹で武器を作らせると、旗や笛を合図に、
猿の兵隊を進ませたり、退かせたり。
だが、しばらくやっているうちに、だんだん不安に
なってきた。

悟 空 「うっかりすると、ほんとうに戦争になるかも
      しれんぞ。人間かけものか、どれかが
      先手をうって攻めてくるかもしれないからな。
      そうなったら、こんな木や竹の武器じゃ
      かないっこない。さてどうしたもんだろう」

 そこへ、赤尻猿(あかしりざる)二匹、
通背猿(つうはいざる)二匹、あわせて四匹の
長老が進み出た。

「大王、武器を手に入れるのはわけもないことです。
東へ二百里も行けば、傲来国、
その都には軍隊が駐屯しております。
 きっと武器を作る職人もおりましょう。
そこへ行かれて武器を買うなり
作らせるなりなさればよろしい」

 悟空は觔斗雲に飛び乗って、ちょいとひと飛び。
都に着くと術を使って傲来国の武器庫に入り込む。
刀、やり、剣、げき、斧、まさかり、鎌、むち、弓、
いしゆみ、ほこ・・・。なんでも揃っている。

悟 空 「こいつはいいや、全部いただきだ。
      だけど、ひとりで運ぶのは面倒だな」

ことつかみ毛を引き抜き、くちゃくちゃかんで、
ぷっと吐き出す。千匹以上の小猿が現れ、
次々に武器を運び出す。たちまち武器庫は
からっぽになった。
まるごと雲に乗せて、一気に水簾洞に戻る。
ぶるっとゆすって毛をからだにつけ、武器を積み上げた。

悟 空 「さあみんな、とりにこい」

 猿たちは、わっと駆け寄り、
てんでに刀や弓を手に取る。
いろんな武器をいじくりまわすうちに、その日は暮れた。
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by seiten_taisei | 2001-03-16 20:40 | 児・花果山水簾洞の巻