花果山の石猿 (かかざんのいしざる) 5

美猴王 「せ、先生。は、は、はじめて、お目に、
      か、か、か・・・」

 なんとか挨拶しようとするが、
焦るばかりで言葉にならない。

祖 師 「まず素性を申すがいい。
      おまえは、どこの何者じゃ」

美猴王 「東勝神州は傲来国、
      花果山水簾洞のものてして」

祖 師 「このうそつきめ!出て失せろ!
      おまえのようなものが、
      仙術をおさめるなど、もってのほか」

美猴王 「いえ、うそいつわりは申しません」

祖 師 「なにをしらじらしい。今、東勝神州と
      言ったではないか。大海が二つと南贍部州と
      その向こうが東勝神州なのだぞ。あんなところから
      来られるわけがない」

美猴王 「いえ、いかだに乗って海を渡り、
      陸にあがって訪ねまわり、十何年もかかって、
      やっとここへ着いたのです」

祖 師 「なるほど。それだけかかったのなら、
      そうかもしれぬ。で、姓はなんという?」

美猴王 「姓はありません。父親も母親もいねえもんで」

祖 師 「木の股からでも生まれたのか」
美猴王 「いえ、木じゃなくて、石から生まれたんで・・・。
      なんでも花果山のいただきの石が割れて、
      生まれたってことです」

祖 師 「そうか、してみると、おまえは、天地が生んだ
      ようなものだな。ちょっと立って歩いてみなさい」

 美猴王はひょこんと立ち上がり、ひょっこり、ひょっこり、
歩いてみせた。

祖 師 「はっはっは、よく松の実を食いに
      胡孫(どちらにも獣辺がつく。コソン。
      中国語で猿の意。ちなみに美猴王の猴も
      猿を示す)が出てくるがよく似ておるぞ。
      よし、おまえの姓もそこから取ってつけてやろう。
      胡孫(さる)の胡・・・うーむ。けものへんに古と
      月か。古は老に通じ、月は陰に通じる。
      あまり縁起がよいとはいえんな。
      どうやら孫の方がよさそうだ。
      けものへんをとれば孫、つまり子と系になる。
      子は男児の意、系は女児の意。
      じつによく釣り合いが取れておる。
      よし、おまえの姓は孫と決まった」

美猴王 「こりゃどうも、ありがとうございます。
      姓っていうものも、あだやおろそかにゃ、
      できねえんですね。ところで先生、
      ついでといっちゃなんですが、このさい名前の方も
      つけちゃくれませんか。姓だけじゃ、呼びにくいや」

祖 師 「ここでは、弟子の名前の付け方が決まっている。
      広大智慧(こうだいちえ)、
      真如性海(しんにょしょうかい)、
      頽悟円覚(えいごえんかく・四文字のうち、
      最初の一字は間違い。正しい字はカタカナのヒ、
      その下にノギヘン、それをヘンとしてつくりに頁)
      この十二字から一字づつとって新入り弟子の
      名前をつけるのじゃ。おまえの順番は、
      十番目の悟にあたる。そうだな、
      では悟空ではどうかな」

美猴王 「いいもわるいもありません。それじゃ、これからは
      孫悟空と名乗ることにします」
[PR]
by Seiten_Taisei | 2001-01-29 00:00 | 児・花果山水簾洞の巻
<< 悟空の修行 (ごくうのしゅぎょ... 花果山の石猿 (かかざんのいし... >>