斉天大聖 (せいてんたいせい) その5

 さて、李天王と哪吒太子は諸将を率いて
天帝のもとに参上した。

「わたくしども、仰せに従い下界に出勤し、妖仙孫悟空を
取り押さえんと致しましたが、聞きしに勝る神通力。
陛下、何卒兵力の補強をお許しください」

天 帝 「なに、たかがばけ猿一匹をやっつけるのに、
      まだ足りぬと申すのか」

哪 吒 「まことにもって申し訳ありませぬ。
      あのばけ猿め、鉄棒をふるって巨霊神を
      打ち負かしたばかりか、わたくしにまで手傷を
      負わせました。その上、洞門の前に 
      『斉天大聖』 と書いた旗を掲げて、
      この官職を寄越せとぬかしております」

天 帝 「うーむ。なんたる気違い沙汰だ。
      諸将を率いて、直ちに討ち取れ」

その時列座の中から
太白金星 (たいはくきんせい) が進み出た。

「陛下。あのばけ猿は、訳もわからず
減らず口を叩いているのです。
武力に訴えればかえって騒ぎを大きくするばかり。
ここはむしろ、もう一度天上界に招き寄せ、
望みのとおり斉天大聖にしてやることです。
なぁに、名ばかりということにすれば問題はございません」

天 帝 「と、いうと?」

金 星 「名は斉天大聖でも、仕事も給料も与えず、
      天地の間に放し飼いにしておくのです。
      こうすれば奴の邪心を抑えることができ、
      天地は安泰、世界も平穏に帰すことでしょう」

天 帝 「宜しい。そちの意見を採る」

 こうして太白金星は、再び花果山水簾洞へ。
前回と違ってあたりに威風がたちこめ、殺気に満ちていた。

金 星 「おーい、そのものたち。大聖に知らせよ。
      天帝からの使いが来たとな」

そっさく取り次ぎの猿が注進に及んだ。

悟 空 「待ってました!
      こりゃきっと、太白金星のオヤジだぜ。
      この前も俺を呼びに来たんだ。
      官職は気に入らなかったが、
      おかげで天上界の見物ができたようなもの。
      今度もきっと悪い話じゃねぇぞ」

 そそくさと衣冠を整えて、迎えに出る。

「や、これは金星どの。ようこそ、ようこそ」

金 星 「李天王及と哪吒太子の報告によれば、
      なんじは旗を打ち立てて、
      斉天大聖なる官職を求めておるそうじゃが。
      天上界では武力でたたけという意見もあったが、
      わしがとくに大聖の為に上奏いたした結果、
      大王を斉天大聖として天上界に招くことと
      相成った。ありがたくお受けするがよいぞ」

 口上を聞き終わって悟空は顔をほころばせた。

「いやぁ、いつもいつも、申し訳ない。しかし、天上界には
斉天大聖なんて官職があるのかい?」

金 星 「わしが得にお願いし、お許しを戴いた。
      大丈夫、大丈夫」

 悟空は大喜びで、
さっそく金星と共に雲をおこして再び天上界へ。
天将、天兵が迎える中を霊霄殿に案内されて
天帝に拝謁した。

天 帝 「孫悟空よ。ちこうよれ。
      そちを斉天大聖に任命する。
      最上の官位ゆえ、
      今後ばかな振る舞いに及ぶでないぞ」

悟 空 「ははぁ、光栄至極に存じます」

 天帝は早速造営官に命じ、
仙桃園 (せんとうえん) の右隣に
斉天大聖府 (せいてんたいせいふ) を建てさせた。
そこに安静司 (あんせいし)、 寧神司 (ねいしんし)、 の
ふたつの役所が設けられ、下働きの仙吏 (せんり) が、
悟空の身の回りの世話をした。

 天帝からは、とくに酒二瓶が下賜された。
 さっそく悟空は、部下一同と着任祝いをし、
なにひとつ心配事のない楽しい暮らしがはじまった。
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by seiten_taisei | 2001-04-05 00:00 | 児・天上界大混乱の巻
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