斉天大聖 (せいてんたいせい) その2

悟 空 「おーい、みんな! 今帰ったぞ」

 悟空が大声をあげると、猿たちはいっせいに集まってきて、地面にひざまづいた。早速酒を用意して、歓迎の宴会。

一 同 「大王、おめでとうございます。
      天上界へ行かれてはや十数年、
      さぞかし御栄達のことでしょう」

悟 空 「なに、十数年? 
      半月ばかり留守をしただけじゃないか」

一 同 「大王は天上界におられたので、
      月日が経つのがわからないんで。
      天上界の一日は、下界の一年ですよ。
      ところで、どんな官職をちょうだいしました?」

悟 空 「いやいや、それがなんとも、みっともない話でさ。
      天帝ときたら、人の使い方も知らん。
      こともあろうに、この俺を弼馬温なんかに
      しやがった。着任したはじめは、なにもわからず、
      がむしゃらに働いたが、
      今日、仲間に聞いてみりゃ、弼馬温っていうのは、
      ただの馬番で、規格外だとよ。
      馬鹿にするなってんで、宴会の席をひっくり返し、
      ケツをまくって戻ってきたわけよ」

一 同 「それでこそ大王。よくぞお帰りくださった。
      この別天地で大王とあがめられるのが一番。
      いまさら馬番なんかやる手はありませんよ
      ----------- おーい、若いの、酒だ酒だ、
      大王をおなぐさめしろ」

 宴もたけなわになった頃、取り次ぎ係が入ってきて、

「大王様、独角鬼王(どっかくきおう)が
お目にかかりたいと参っております」

悟 空 「これへとおせ」

 鬼王(きおう)が衣服を整えて入って来て、
ははあ、とひれ伏した。

悟 空 「なんの用だ」

鬼 王 「ええ、うたけまわれば、大王は天上界の
      一員として、この度 故郷に錦を飾られたよし。
      お祝いのしるしに、赭黄袍 (しゃこうほう) 
      一着を持参致しました」

 見れば、目も覚めるようなオレンジ色の、礼装用の上着。悟空はすっかり気をよくして、早速着込んだ。

鬼 王 「ところで大王、
      ながらく天上界におられましたが、
      どんな官職に就かれたので?」

悟 空 「天帝のやつ、見くびりやがって、
      弼馬温なんかにしやがった」

鬼 王 「大王ほどの神通力がありながら、馬番とは!
      『斉天大聖』 (せいてんたいせい) を
      さずけられてもおかしくはありませんぞ」

悟 空 「なに、斉天大聖?
      ”天と斉 (ひと) しい大聖” か。これはいい。
      おい、おまえたち、急いで旗を用意しろ。 
      『斉天大聖』 と大きく書いて、旗竿にかけるんだ。
      よいか、これからおれは、斉天大聖と名乗る。
      大王なんて呼ぶんじゃないぞ。
      妖王どもによく伝えて、
      間違えないよう気をつけさせろ」

  こうして悟空は 斉天大聖孫悟空となった。
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by seiten_taisei | 2001-04-02 00:00 | 児・天上界大混乱の巻
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