如意金箍棒 (にょいきんこぼう) その2

 あくる日、全山の猿に集合命令を出すと、
あつまった猿はなんと四万七千匹。
これがみんな武器を持って並んだのだから、
驚いたのはほかの動物の妖王(ようおう)。
花果山には、オオカミ、虎、ヒョウ、シカ、キツネ、タヌキ、
ムジナ、獅子、象、ショウジョウ、熊、カモシカ、その他、
あわせて七十二種類の妖王がいたが、
みな悟空のところへ飛んできて、服従を誓った。
 それからというもの、妖王たちも太鼓を鳴らし、
旗を立てて、鎧に身をかためて、訓練に加わった。
花果山は毎日ドンドン、ジャンジャンの大騒ぎである。
 悟空は大満足だったが、そのうちに、ふと思いついた。

悟 空 「みんな、弓もやりもうまくなったな。
      だがおれの刀はどうも使いにくい。
      なんとかならんもんかな」

長 老 「いまや大王は神仙(しんせん)の身、
      普通の武器では役に立ちません。
      そこで大王、ひとつお伺いしたいが、
      大王は水にもぐれますかな」

悟 空 「もちろんだ。天にものぼれば、
      地にももぐる。水にもおぼれないし、
      火にも焼けない。どこへだって行けるぞ」

長 老 「それなら、竜王をたずねて行けばよろしい。
      水簾洞の水は、東海の竜宮まで
      通じております。あそこへ行けば、
      何かお気に召すものが見つかるかと
      思いますが」

 さっそく橋の上から水に飛び込む。
閉水(へいすい)の術を使って水をおしわけながら、
東海の底へ。
おりからパトロール中の竜宮の警備兵が声をかけた。

「いずれの神仙でござる。お名乗りあれば、
ご案内いたそう」

悟 空 「花果山の孫悟空だよ。
      竜王とは隣同士だぜ。知らねぇって言うのかい?」

あわてて警備兵が報告に戻る。
東海竜王は、悟空を水晶宮(すいしょうきゅう)に
迎え入れた。

竜 王 「ようこそ、おいでなされた。
      して、ご用のむきは?」

悟 空 「山洞(さんどう)を守らなきゃならねぇんだが、
      あいにくと、ろくな武器がなくてね。
      ここなら何しろ竜宮だ。 
      余分にあるに違いないっていうんで、
      戴きに参上したわけですがね」

竜王も断るわけにいかず、
ひとふりの太刀を持ってこさせた。

悟 空 「どうも刀ってやつは苦手なんで。
      ほかのものがいただきたい」

こんどは家来が二人がかりで、なにやら担ぎだしてくる。
これは九股叉(きゅうこさ)といって、先が九本に分かれた
フォークのばけものみたいなやつ。
悟空はひょいと受け取って、ひとふりくれると、
ポーンと投げ出した。

悟 空 「こりゃ、軽すぎらぁ」

竜 王 「えっ、なんと! 
      これは三千六百斤もあるのですぞ」

悟 空 「いや、お話になりませんな」

竜王も、これには驚いた。びくびくしながら
家来に命令する。やがて、担ぎ出されたのは
方天戟(ほうてんげき)といって、枝付きのほこ。
これは重さが七千二百斤ある。
走りよって受け取った悟空、
そいつをびゅうびゅう打ち振って、ドンとつき立てた。

「まだまだ軽い」

竜 王 「ややや、これが一番重いというのに!
      竜宮には、これ以上のものはありませんぞ」

悟 空 「いやいや、ごけんそん。
      昔から、宝物なら竜宮っていうくらいなもの。
      もっとよく探してもらいたいね。
      いいのがありゃ、金は払うから」

竜 王 「いや、ほんとうにもうないのだ」
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by seiten_taisei | 2001-03-17 10:33 | 児・花果山水簾洞の巻
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